通販事業者の広告費の割合は?業種別の平均もご紹介
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通販事業者にとって、広告費は顧客獲得のための重要な投資ですが、その割合は業種や企業によって大きく異なります。適切な広告費の設定は、収益性を左右する重大な経営判断といえるでしょう。
本記事では、通販企業の広告費割合について、一般企業との違いや業種別の特徴を詳しく解説します。売上に占める広告費の割合や、CPOやROASといった主要なKPIの意義と活用方法についても触れつつ、データ分析に基づく広告費の最適化につながる実践的なポイントをお伝えします。
通販企業の広告費の特徴と考え方
通販企業にとって、広告費は売上を最大化するための必須コストであり、顧客獲得のための投資的性質を持っています。ここでは、通販企業における広告費の位置づけや一般企業との違いを説明し、売上に占める広告費の割合について解説します。
通販企業における広告費の位置づけ
通販企業にとって、広告は単なる間接費ではなく、売り場としての機能を持つ直接費として位置づけられています。店舗や営業部門の代替機能を果たす広告は、顧客獲得の主要手段であり、商品やサービスの認知向上のために欠かせない存在です。
通販企業の広告費には、各種媒体への広告出稿費、カタログやDMの作成費用、販促用チラシの制作費、広告目的のノベルティ制作費、見本品・サンプル作成費などが含まれます。これらの費用は、売上最大化のための必須コストとして認識されています。
一般企業との広告費の違い
一般企業では、広告費は間接費としての位置づけが強く、販売・営業活動の補助的役割を担うことが多いです。店舗での対面販売が主力であるため、広告は側面支援の位置づけにとどまります。一方、通販企業では、広告が顧客獲得の主要手段であり、店舗や営業部門の代替機能を果たすため、直接費としての性質が強くなります。
この違いは、広告費に対する考え方や投資判断にも影響を与えます。通販企業では、広告費を売上に直結する投資と捉え、積極的に予算を配分する傾向があります。一方、一般企業では、広告費を経費として扱い、投資効果の測定が難しいため、慎重な予算配分が求められます。
通販企業の売上に占める広告費の割合
通販企業の売上に占める広告費の割合は、一般企業と比べて高い傾向にあります。上場企業の広告費比率ランキングを見ると、上位には多くの通販企業が名を連ねています。例えば、東京通信の広告費率は53.41%、ファーマフーズは53.17%、リビン・テクノロジーズは52.37%といった具合です。
これらの企業では、広告費が売上の半分以上を占めていることがわかります。一般的に、通販企業の広告費率は20%〜50%程度が目安とされており、事業の成長段階や市場環境によって変動します。成長期には積極的な広告投資を行い、安定期には効率を重視した予算配分を行うのが一般的です。
ただし、広告費率の高さが直ちに企業の収益性の低さを意味するわけではありません。通販企業では、広告費を投資と捉え、顧客獲得単価(CPO)や広告費用対効果(ROAS)、顧客生涯価値(LTV)といった指標を用いて、投資効率を評価します。これらの指標を適切にモニタリングし、改善を続けることで、高い広告費率を維持しつつ、収益性の向上を目指すことが可能になります。
業種別の広告費割合の平均
業種別の広告費割合を見ていくと、企業の事業特性や市場環境によって、広告投資に対する考え方や戦略に大きな違いがあることがわかります。ここでは、上場企業の広告費比率ランキングを見ながら、業種ごとの広告費割合の特徴を分析し、特に通販企業における広告費の位置づけについて詳しく見ていきます。
上場企業の広告費比率ランキング
東証一部上場企業の中で、広告費比率が高い企業のランキングを見ると、通販系企業が上位を占めていることがわかります。トップ10社の広告費率は以下の通りです。
- 東京通信:53.41%
- ファーマフーズ:53.17%
- リビン・テクノロジーズ:52.37%
- 出前館:51.31%
- アトラエ:47.96%
- ポート:44.26%
- ジェイフロンティア:41.40%
- キャリアインデックス:41.34%
- エイチーム:39.61%
- KIYOラーニング:39.22%
これらの企業は、いずれも通販事業やインターネットサービスを主力とする企業であり、広告を売上拡大の直接的な手段として活用していることがわかります。一方、製造業や小売業など、店舗販売を中心とする企業の広告費率は相対的に低い傾向にあります。
通販企業の広告費割合の業界内比較
通販業界の中でも、事業モデルや商品特性によって、広告費割合には差異が見られます。定期購入型の商品を扱う企業では、新規顧客の獲得よりも既存顧客の維持に重点を置くため、広告費率は相対的に低くなる傾向があります。一方、都度購入型の商品を主力とする企業では、常に新規顧客の獲得が必要であるため、積極的な広告投資を行う傾向が強いでしょう。
また、商品単価や利益率によっても、広告費の最適値は異なります。高単価・高利益率の商品を扱う企業では、広告費を投下しても十分な利益を確保できるため、広告費率が高くなりがちです。逆に、低単価・低利益率の商品を扱う企業では、広告費の投下が利益を圧迫するリスクがあるため、効率重視の広告運用が求められます。
通販企業の広告戦略を考える上では、自社の事業特性や商品特性を踏まえ、最適な広告費割合を見極めることが重要です。画一的な基準にとらわれることなく、投資対効果を常にモニタリングしながら、PDCAサイクルを回していくことが求められるでしょう。同時に、市場環境の変化や競合動向にも注意を払い、柔軟に戦略を調整していくことが必要です。
通販企業の広告効果測定に用いる主要KPI
効果的な広告戦略を立てるためには、適切なKPIを設定し、定期的に効果測定を行うことが不可欠です。ここでは、通販企業が広告効果を測定する際に重視すべき主要なKPIについて解説します。
CPO(Cost Per Order)の意義と算出方法
CPO(Cost Per Order)は、新規顧客1件あたりの獲得コストを表す指標です。これは、広告費総額を受注件数で割ることで算出されます。CPOが低いほど、広告費用に対する受注効率が高いと言えるでしょう。
例えば、月間の広告費が100万円で、その月の新規受注件数が1,000件だった場合、CPOは1,000円となります。この数値を他社や自社の過去実績と比較することで、現在の広告効果を相対的に評価できます。
ただし、CPOは短期的な指標であり、顧客のライフタイムバリューまでは考慮されていません。そのため、CPOだけでなく、長期的な顧客価値も併せて評価する必要があります。
ROAS(Return on Advertising Spend)の重要性
ROAS(Return on Advertising Spend)は、広告費に対する売上の比率を表す指標です。売上総額を広告費で割ることで算出され、一般的には200%以上が目標とされています。ROASが高いほど、広告による売上貢献度が高いことを示しています。
例えば、月間の広告費が100万円で、その月の広告経由の売上が250万円だった場合、ROASは250%となります。この数値が高いほど、広告による販促効果が高いと判断できるでしょう。
ただし、ROASは売上総額に基づく指標であるため、利益率は考慮されていません。したがって、ROASだけでなく、広告経由の受注による利益も合わせて評価することが重要です。
LTV(Lifetime Value)を考慮した広告投資判断
LTV(Lifetime Value)は、ある顧客が一定期間内にもたらす総利益を表す指標です。通常、1年間の累計売上高をベースに算出されます。LTVが高いほど、顧客のロイヤリティが高く、長期的な収益貢献度が高いと言えます。
例えば、ある顧客のLTVが5万円だとします。この場合、その顧客の獲得に5万円以下の広告費を投じることができれば、長期的には利益が見込めるでしょう。逆に、LTVを超える広告費を投じてしまうと、たとえ一時的に売上が立ったとしても、最終的には赤字になってしまう可能性が高くなります。
このように、LTVを考慮することで、CPOやROASといった短期的な指標だけでは判断できない、長期的な広告投資の妥当性を評価することができるのです。LTVを重視し、長期的な顧客価値の最大化を目指すことが、持続的な広告戦略には不可欠です。
以上のように、CPO、ROAS、LTVは、通販企業が広告効果を測定し、適切な投資判断を行う上で重要なKPIです。これらの指標を総合的に評価し、PDCAサイクルを回すことで、効果的な広告運用が可能となるでしょう。同時に、市場環境の変化や競合他社の動向にも注意を払い、柔軟に戦略を調整していくことが求められます。
通販企業の広告費最適化のポイント
通販事業者にとって、広告費の最適化は収益向上に直結する重要な課題です。ここでは、メディア別の特性を踏まえた戦略的な予算配分、ターゲット層に応じた効果的なアプローチ方法、データ分析に基づく継続的な改善サイクルの確立という3つの観点から、通販企業の広告費最適化のポイントを解説します。
メディア別の特性を踏まえた戦略的な予算配分
通販企業の広告費最適化においては、メディア別の特性を理解し、戦略的に予算を配分することが重要です。Web広告は最小投資額での開始が可能で、即時的な効果測定とPDCAサイクルの実施が容易という特徴があります。一方、テレビ広告は幅広い認知獲得、新聞広告は高年齢層への訴求、ラジオ広告は地域特性の活用、雑誌広告は特定層への集中訴求という強みを持っています。
各メディアの特性を踏まえ、自社の事業戦略や目標に合わせて予算を配分することが重要です。例えば、新規顧客獲得を目的とする場合は、Web広告に重点的に予算を割り当て、即時的な効果検証とPDCAサイクルの実施により、投資効率を最大化することができます。一方、ブランド認知度向上を目的とする場合は、テレビ広告や新聞広告など、マス媒体への予算配分を検討すべきでしょう。
ターゲット層に応じた効果的なアプローチ方法
また、ターゲット層に応じた効果的なアプローチ方法の選択も重要です。若年層向けには、SNS広告の活用、動画コンテンツの重視、インフルエンサー施策、モバイルファースト対応などが有効です。一方、シニア層向けには、新聞広告の活用、テレビCMの利用、オフライン媒体の重視、文字情報の充実化などが効果的でしょう。
例えば、化粧品通販企業が20代女性をターゲットとする場合、Instagram広告やYouTube動画広告を中心に、人気インフルエンサーとのタイアップ企画を実施することで、高い広告効果が期待できます。逆に、健康食品通販企業が60代以上の男性をターゲットとする場合は、新聞広告やテレビCMを活用し、商品の詳細な文字情報を提供することで、信頼感を醸成し、購買行動につなげることができるでしょう。
データ分析に基づく継続的な改善サイクルの確立
最後に、データ分析に基づく継続的な改善サイクルの確立が不可欠です。広告効果の測定指標としては、CTR(クリック率)、CVR(コンバージョン率)、入札単価の適正度、媒体別投資効率などが挙げられます。これらの指標を定期的に分析し、改善施策を実施することが重要です。
改善アプローチとしては、クリエイティブの最適化、ターゲティングの精緻化、予算配分の見直し、媒体組み合わせの調整などが考えられます。例えば、ある通販企業がWeb広告の効果測定を行ったところ、CVRが業界平均を下回っていたとします。この場合、広告クリエイティブの改善、ターゲティング設定の見直し、入札単価の調整などを行い、次の測定までにCVRの向上を目指すことが重要です。こうした改善サイクルを継続的に実施することで、広告費の最適化と売上拡大を実現できるでしょう。
通販企業の広告費最適化には、メディア別の特性理解、ターゲット層に応じたアプローチ、データ分析に基づく改善サイクルが不可欠です。自社の事業戦略や目標に合わせて、これらの観点から広告施策を立案・実行し、PDCAサイクルを回していくことが、収益向上への近道となるでしょう。
まとめ
通販企業にとって、広告費は顧客獲得のための重要な投資であり、その割合は一般企業と比べて高い傾向にあります。本記事では、通販企業の広告費割合について、業種別の特徴や主要なKPIの意義と活用方法を詳しく解説しました。
データ分析に基づく広告費の最適化は、通販企業の収益向上に直結する重要な課題です。メディア別の特性を踏まえた戦略的な予算配分やターゲット層に応じた効果的なアプローチ方法など、実践的なポイントを押さえることで、広告投資の効率化を図ることができます。
本記事で紹介した知見を活用し、自社の事業特性や目標に合わせた広告戦略を立案・実行することで、売上拡大と収益性の向上を実現してください。
参考文献
https://www.tsuhan-marketing.com/blog/marketing/adcosts_suitableline

River編集部
株式会社Riverはデジタルマーケティングの支援を中心とした事業を行う企業であり、小規模・中小企業〜大企業まで多様な企業の支援実績があります。本記事はRiverの支援実績をもとに、マーケティング課題を持つ企業の役に立つことができれば。という想いから執筆しています。マーケティングに関するご相談がございましたら、気軽にお問い合わせください。