カスタマージャーニーって?意味と目的、活用のコツを解説
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顧客の購買行動が複雑化する中、マーケティング施策の効果を最大化するためには、カスタマージャーニーの理解と活用が欠かせません。しかし、カスタマージャーニーの概念や具体的な実践方法について、十分な理解を持つマーケターは多くないのが現状です。
本記事では、カスタマージャーニーの基本概念から、マップの作成方法、活用のメリット、運用の重要ポイントまで、体系的に解説します。
カスタマージャーニーを深く理解し、自社のマーケティング活動に適切に取り入れることで、顧客一人ひとりのニーズに寄り添った、効果的なアプローチが可能になるでしょう。顧客視点でのマーケティング改革を進めるヒントが、ここに詰まっています。
カスタマージャーニーとは
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを認知し、興味を持ち、検討し、購入に至るまでの一連の過程を表します。この過程には、商品・サービスの認知段階、購入検討プロセス、実購入・契約行動、リピート購入行動、口コミ投稿行動、そして感情変化の過程が含まれます。
現代のデジタル社会では、顧客は多様なチャネルを通じて情報を収集し、購買意思決定を行います。そのため、カスタマージャーニーは複雑化しています。例えば、ITツールの購入では、YouTube広告での認知、比較サイトでの機能確認、レビューサイトでの評判確認、無料トライアル申込みといった複数のステップを経ることがあります。
カスタマージャーニーが重要視される理由
カスタマージャーニーが重要視される理由は、顧客視点でのマーケティング施策設計が可能になるからです。カスタマージャーニーを理解することで、適切なタイミングで適切なコンテンツを提供し、顧客の購買意欲を高めることができます。また、施策の効果測定や目標設定も明確になります。
組織的な観点でも、カスタマージャーニーは重要な役割を果たします。部門間連携の強化、共通認識の形成、施策目的の明確な共有、実行プロセスの効率化など、多くのメリットがあります。カスタマージャーニーを軸にマーケティング活動を展開することで、組織全体の成果向上につなげることができるのです。
カスタマージャーニーの発展
カスタマージャーニーの概念は、1998年にOxford Corporate Consultants(現在のOxfordSM)によって考案されました。当初は政府支援での活用を通じて普及し、その後、マーケティングの権威であるフィリップ・コトラー氏の著書で一般化されました。
インターネットの普及とソーシャルメディアの台頭により、カスタマージャーニーは大きく変化しました。「接続性の時代」への移行とともに、顧客の購買プロセスはより複雑化しています。この変化に対応するため、カスタマージャーニーの概念は5Aモデル(Aware, Appeal, Ask, Act, Advocate)へと発展しました。
現在、カスタマージャーニーに基づく考え方は多くの企業で活用されています。BtoB企業ではホワイトペーパーや業界特化型コンテンツ、活用事例の集積などを通じて、顧客の購買プロセスに沿ったアプローチを行っています。一方、BtoC企業では効能訴求型ランディングページの作成、初回お試しキャンペーン、SNS活用戦略、口コミ活用方法などを駆使して、顧客との接点を強化しています。
カスタマージャーニーマップの構造と要素
カスタマージャーニーマップは、顧客の購買プロセスを可視化し、マーケティング施策の最適化に役立てるためのツールです。ここでは、カスタマージャーニーマップの基本的な構成要素や、BtoBとBtoCの違いについて解説します。また、複雑化する現代の購買プロセスの具体例を交えながら、実務的な活用方法についても触れていきます。
カスタマージャーニーマップの基本構成
カスタマージャーニーマップの基本構成は、以下の4つの要素で成り立っています。
- 購買プロセスの時系列配置
- 顧客行動の記録
- 感情変化の追跡
- タッチポイントの設定
購買プロセスの時系列配置では、商品・サービスの認知から購入後の行動までを時間軸に沿って並べます。顧客行動の記録では、各段階での顧客の具体的な行動を記述し、感情変化の追跡では、それぞれの行動に伴う感情の変化を可視化します。タッチポイントの設定では、企業と顧客が接点を持つポイントを特定し、適切なコンテンツや施策を配置します。
BtoBとBtoCのカスタマージャーニーマップの違い
BtoBとBtoCでは、顧客の購買プロセスに違いがあるため、カスタマージャーニーマップの構成にも差異が生じます。BtoBの場合、以下のような特有の要素を考慮する必要があります。
- 商談プロセスの組み込み
- 担当者と決裁者の双方考慮
- 稟議フローの考慮
- 組織的意思決定プロセス
一方、BtoCの場合は、個人の感情や行動に重点を置いたマップ構成になります。SNSやレビューサイトなどの情報源の影響が大きいため、それらのタッチポイントを適切に組み込むことが重要です。
複雑化する購買プロセスの具体例
現代の消費者は、多様な情報源を活用して購買意思決定を行うため、購買プロセスは複雑化しています。以下は、ITツール、化粧品、家電の購入パターンの具体例です。
ITツール購入パターン
- YouTube広告での認知
- 比較サイトでの機能確認
- レビューサイトでの評判確認
- 無料トライアル申込み
化粧品購入パターン
- TikTokでの商品認知
- Amazonでのレビュー確認
- 最安値サイトの検索
- メーカーサイトでの定期購入
家電購入パターン
- ECサイトでの初期確認
- 実店舗での詳細確認
- ECサイトへの再訪問
- オンラインでの最終購入
これらの例からわかるように、現代の消費者は多様なチャネルを横断的に活用しながら購買意思決定を行っています。企業は、それぞれのタッチポイントでの顧客体験を最適化し、シームレスな購買プロセスを提供する必要があります。カスタマージャーニーマップは、こうした複雑な購買プロセスを可視化し、効果的なマーケティング施策の立案に役立てることを可能にします。
カスタマージャーニーの実践方法
カスタマージャーニーは、顧客の購買プロセスを可視化し、マーケティング施策の最適化に役立てる手法です。続いては、カスタマージャーニーの実践的な活用方法について解説します。
カスタマージャーニーマップの作成手順
カスタマージャーニーマップの作成は、購買プロセスの時系列配置、顧客行動の記録、感情変化の追跡、タッチポイントの設定といった基本構成要素を押さえることから始まります。BtoBの場合は、商談プロセスや担当者と決裁者の双方考慮、稟議フローや組織的意思決定プロセスといった特有の要素も組み込む必要があります。
初期設計のステップとしては、優先ペルソナの設定、基本構造の決定、態度変容ポイントの特定、コンテンツマッピングが重要です。継続的な改善プロセスでは、四半期ごとの振り返り、リード獲得状況の分析、受注率の確認、必要な改善点の特定を行います。
マーケティング施策の立案
マーケティング施策の立案段階では、業態別の具体的アプローチが重要です。BtoB企業では、ホワイトペーパーの活用、業界特化型コンテンツ、活用事例の集積、ペルソナ別施策設計などが有効です。
一方、BtoC企業では、効能訴求型LP作成、初回お試しキャンペーン、SNS活用戦略、口コミ活用方法などが効果的です。これらのアプローチを、自社の業態や顧客特性に合わせて適切に選択し、実行することが求められます。
業態別の具体的アプローチ
マーケティング施策の実践にあたっては、組織体制の構築と効果測定、改善サイクルの運用が欠かせません。マーケティング部門が主導し、営業部門やカスタマーサポート部門との連携を図ることで、施策の効果的な実行が可能となります。
効果測定では、リード獲得数の追跡、態度変容の確認、購買行動の分析、顧客満足度の測定などを行います。定期的な見直しを通じて、データに基づく検証、顧客フィードバックの収集、新規施策の検討、既存施策の最適化を進めることが重要です。
長期的には、顧客理解の深化、施策精度の向上、組織的な理解促進、継続的な改善体制の構築を目指します。これらの取り組みを通じて、カスタマージャーニーに基づくマーケティングの真価を発揮することができるのです。
カスタマージャーニー運用の重要ポイントと改善サイクル
最後に、カスタマージャーニーを効果的に運用するために必要な組織体制や効果測定の方法、さらには継続的な改善サイクルの実践方法などについて詳しく解説していきます。これらを理解し実践することで、カスタマージャーニーを企業の成長に役立てることができるでしょう。
カスタマージャーニー運用に必要な組織体制
カスタマージャーニーを効果的に運用するためには、適切な組織体制の構築が不可欠です。中でも重要なのが、マーケティング部門の主導的な役割です。カスタマージャーニーはマーケティング戦略の中核を担うものであり、マーケティング部門がリーダーシップを発揮して全社的な取り組みを推進する必要があります。
また、営業部門やカスタマーサポート部門など、顧客接点を持つ他部門との連携も欠かせません。これらの部門が持つ顧客情報やフィードバックを活用することで、より精度の高いカスタマージャーニーを設計できるからです。部門間の円滑な情報共有と協力体制の構築が、カスタマージャーニー運用の鍵を握ると言えるでしょう。
カスタマージャーニーの効果測定指標
カスタマージャーニーの実践において、その効果を適切に測定することは極めて重要です。効果測定によって施策の改善点を明らかにし、PDCAサイクルを回していく必要があるからです。カスタマージャーニーの効果は、リード獲得数や購買行動、顧客満足度など多岐にわたる指標で評価することができます。
例えば、各接点でのリード獲得数を追跡することで、コンテンツの訴求力を測ることができます。また購買に至るまでの態度変容を確認することで、施策の有効性を判断できるでしょう。顧客満足度は、カスタマージャーニー全体の成果を評価する上で欠かせない指標と言えます。これらの数値を定期的にモニタリングし、改善に活かしていくことが求められます。
継続的な改善サイクルの実践
カスタマージャーニーは、一度設計したら終わりというものではありません。顧客の行動や嗜好は常に変化するため、継続的にカスタマージャーニーを見直し、改善していく必要があります。定期的なデータ検証と顧客フィードバックの収集が、改善サイクルを回す上で重要なプロセスとなります。
データに基づいて既存施策の効果を検証し、改善点を洗い出すこと。顧客の声に耳を傾け、ニーズの変化を敏感に察知すること。これらを踏まえて、新規施策の立案と実行、そして既存施策の最適化を行っていくことが求められます。この一連の改善サイクルを着実に実践することが、カスタマージャーニーの成功につながるのです。
カスタマージャーニーを活用した長期的な顧客理解の深化
カスタマージャーニーの真の目的は、短期的な売上向上だけではありません。それを通じて、長期的に顧客理解を深めていくことこそが重要だと言えます。カスタマージャーニーを継続的に改善していくことで、顧客一人ひとりの行動や心理をより深く理解できるようになります。
顧客理解が深まれば、マーケティング施策の精度も自ずと向上します。目的や課題に合わせて、最適なアプローチを展開できるようになるでしょう。加えて、顧客理解は組織全体で共有されるべき重要な財産になります。
まとめ
カスタマージャーニーは、顧客の購買プロセスを深く理解し、マーケティング施策の最適化を図るための重要な手法です。顧客視点に立ったアプローチにより、適切なタイミングで適切なコンテンツを提供し、顧客の購買意欲を高めることができます。
カスタマージャーニーマップの作成では、購買プロセスの時系列配置、顧客行動の記録、感情変化の追跡、タッチポイントの設定が基本となります。BtoBとBtoCでは顧客の購買プロセスに違いがあるため、それぞれの特性を踏まえたマップ設計が求められます。
カスタマージャーニーを活用することで、マーケティング施策の改善や組織的な効果が期待できます。業態に応じた具体的なアプローチを実践し、効果測定と改善サイクルを回すことが重要です。
継続的なカスタマージャーニーの運用には、マーケティング部門の主導的な役割と他部門との連携が欠かせません。データに基づく検証と顧客フィードバックの収集を通じて、施策の最適化を図っていくことが求められます。
参考文献
https://sairu.co.jp/method/16013/

River編集部
株式会社Riverはデジタルマーケティングの支援を中心とした事業を行う企業であり、小規模・中小企業〜大企業まで多様な企業の支援実績があります。本記事はRiverの支援実績をもとに、マーケティング課題を持つ企業の役に立つことができれば。という想いから執筆しています。マーケティングに関するご相談がございましたら、気軽にお問い合わせください。