ビジネスを最大化させるための適切な獲得単価(CPA)の設定とは?
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ビジネスの成長と売上最大化を目指す上で、獲得単価(CPA)の適切な設定は欠かせません。CPAとは顧客1件あたりの獲得コストのことで、この目標値を事業の状況に合わせて戦略的に定めることが、広告運用の最適化と収益向上につながります。
しかし、CPAの設定を誤ると、広告効果の判断が難しくなったり、赤字や機会損失を招くリスクがあるため注意が必要です。
本記事では、ビジネスモデルに応じた目標CPAの算出方法から、CPAを改善するための具体的な施策、さらには売上最大化のための柔軟なCPA運用まで、ビジネス成長に不可欠なCPA設定の重要性について解説します。
獲得単価(CPA)とは何か?広告運用におけるCPAの重要性
ネット広告の運用において、効果的な予算配分と最適化を行うためには、広告の成果を適切に測定する必要があります。
特にコンバージョンを目的とした広告では、獲得単価(CPA)が重要な指標となります。本記事では、CPAの定義や計算方法、設定時の注意点など、CPAについて詳しく解説します。
CPAの定義と計算方法
CPAとはCost Per Acquisition(顧客獲得単価)またはCost Per Action(成果単価)の略語で、1件のコンバージョン(商品購入や資料請求など)を獲得するために必要な広告費用を指します。CPAは顧客獲得単価、獲得単価、成果単価とも呼ばれます。
CPAの計算式は以下の通りです。
CPA = 広告費 ÷ コンバージョン数
例えば、1ヶ月の広告費が10万円で、その間のコンバージョン数が20件だった場合、CPAは5,000円となります。
CPAが広告効果を測定する上で重要な理由
CPAが広告効果を測る上で重要な理由は、以下の3点が挙げられます。
- 広告の目的がコンバージョンにある場合、CPAは最も直接的な成果指標となる
- CPAを把握することで、広告費用対効果(ROI)を計算できる
- CPAを基準に、広告運用の改善や最適化を行うことができる
特にコンバージョンを目的とした広告では、クリック数やインプレッション数よりもCPAの方が重要な指標となります。CPAを適切にコントロールすることが、効果的な広告運用につながるのです。
CPAを適切に設定しないことによるリスク
一方で、CPAを適切に設定しないことには以下のようなリスクがあります。
- 目標CPAがない場合、広告の成果判断が困難になる
- 目標CPAが高すぎると、赤字になる恐れがある
- 目標CPAが低すぎると、機会損失が発生する可能性がある
本来は目標CPAと目標コンバージョン数から必要な広告予算を算出すべきですが、予算ありきで目標CPAを決めてしまうケースも少なくありません。
しかし、それでは適切な広告運用は難しいでしょう。事業の収益性を考慮しつつ、現実的な目標CPAを設定することが肝要です。
以上のように、CPAは広告運用における重要な指標の1つです。次章以降では、ビジネスモデル別の目標CPA設定方法や、CPAを改善するための施策などについて解説します。
ビジネスモデルに応じた目標CPAの設定方法
適切な目標CPAを設定することは、広告運用の成果を最大化するために非常に重要です。ビジネスモデルによって目標CPAの計算方法は異なるため、自社の状況に合わせて適切な数値を算出する必要があります。ここでは、非リピート型通販サイト、直接売上に繋がらないケース、リピート性のあるサービスの3つのビジネスモデルについて、それぞれの目標CPA設定方法を解説します。
非リピート型通販サイトにおける目標CPAの計算式
非リピート型の通販サイトでは、顧客の平均購入額と原価、そして広告費用率から目標CPAを算出します。
具体的には以下の計算式を用います。
目標CPA = (平均顧客単価 - 原価) × 広告費用率
例えば、平均顧客単価が20,000円、原価が5,000円、広告費用率を30%と設定した場合、目標CPAは以下のように計算されます。
(20,000円 - 5,000円) × 0.3 = 4,500円
この場合、1件の顧客獲得に対して最大4,500円までの広告費用を投じることができます。ただし、広告費用率が高すぎると利益率が下がるため、適切なバランスを見極めることが重要です。
ただし、この計算で求めた目標CPAを基に広告費用を設定すると、固定費を考慮していないため、実際には赤字になる可能性があります。固定費には人件費や賃料などが含まれます。
これらの費用を加味して、本当の目標CPAを検討する必要があります。単純に平均顧客単価から原価を引いた粗利だけを目標とするのではなく、総合的なコストを考慮して、持続可能なビジネスモデルを構築することが重要です。
直接売上に繋がらないケースでの目標CPAの求め方
資料請求や問い合わせなど、直接的な売上に結びつかないコンバージョンを目的とする場合、目標CPAは平均顧客単価と成約率から算出します。
計算式は以下の通りです。
目標CPA = 平均顧客単価 × 成約率
仮に平均顧客単価が50,000円で、資料請求から実際の成約に至る確率が10%だとすると、目標CPAは次のように計算されます。
50,000円 × 0.1 = 5,000円
つまり、1件の資料請求を獲得するのに最大5,000円の広告費用を投じることができます。ただし、成約率を正確に把握し、適宜目標CPAを見直すことが求められます。
リピート性のあるサービスの目標CPA算出方法
継続課金型のサービスなど、顧客のリピート率が高いビジネスモデルでは、顧客生涯価値(LTV)を考慮して目標CPAを設定する必要があります。
計算式は以下の通りです。
目標CPA =(平均顧客単価 - 平均原価)× 平均購入回数
例えば、月額5,000円のサービスで平均原価が2,000円、平均購入回数が6回だとすると、目標CPAは次のように算出されます。
(5,000円 - 2,000円)× 6回 = 18,000円
この場合、1人の顧客を獲得するために最大18,000円の広告費用を投資することができます。ただし、平均購入回数は定期的に見直し、適切な目標CPAを維持することが重要です。
以上のように、ビジネスモデルに応じて目標CPAの計算方法は異なります。自社の状況を正確に把握し、適切な数値を設定することで、広告運用の効果を最大限に引き出すことができるでしょう。また、目標CPAは固定されたものではなく、市場の変化や競合の動向に合わせて柔軟に調整していく必要があります。
目標CPAを適切に設定したら、次はその数値を達成するために具体的な施策を実行に移します。キーワードの選定、広告文の最適化、ランディングページの改善など、様々な角度からアプローチすることで、CPAを改善し、広告運用の成果を最大化していきましょう。
目標CPAから広告入札単価の設定方法
広告運用におけるCPA(顧客獲得単価)の設定は、キャンペーンの成功を左右する重要な要素です。適切な目標CPAを設定し、それに基づいて入札単価を決めることで、効果的な広告運用が可能になります。ここでは、目標CPAから広告入札単価を設定する方法について解説します。
目標CPAとコンバージョン率から入札単価を逆算する
目標CPAと予想されるコンバージョン率(CVR)から、広告の上限入札単価を算出することができます。この方法は、目標CPAを達成するために必要な入札単価を明確にするのに役立ちます。
計算式は以下の通りです。
上限入札単価 = 目標CPA × コンバージョン率(CVR)
例えば、目標CPAが10,000円で、CVRが1%の場合、上限入札単価は以下のように計算されます。
上限入札単価 = 10,000円 × 1% = 100円
この場合、広告の入札単価を100円以下に設定することで、目標CPAを達成できる可能性が高くなります。ただし、この計算はあくまで目安であり、実際の運用では広告の品質やランディングページの最適化など、他の要因も考慮する必要があります。
適切な入札単価設定がCPA改善に与える影響
適切な入札単価を設定することは、CPAの改善に直結します。入札単価が高すぎると、不要なクリックが増え、CPAが上昇してしまう可能性があります。一方、入札単価が低すぎると、広告が表示される機会が減り、コンバージョン数が伸び悩むことがあります。
したがって、目標CPAを達成するためには、適切な入札単価の設定が不可欠です。入札単価の調整は、広告の品質スコアやコンバージョン率など、他の要因とのバランスを考慮しながら行う必要があります。
例えば、品質スコアを上げることで、同じ入札単価でもより上位に広告が表示されるようになります。また、ランディングページの最適化によってコンバージョン率を改善することで、同じ入札単価でもより多くのコンバージョンを獲得できるようになります。
入札単価の設定と運用における注意点
入札単価の設定と運用には、いくつかの注意点があります。まず、入札単価は定期的に見直し、必要に応じて調整することが重要です。市場の競争状況や広告の成果によって、最適な入札単価は変化する可能性があるためです。
また、入札単価の設定は、キャンペーンの目的やターゲットオーディエンスによっても異なります。新規顧客の獲得を目的とする場合は、目標CPAを高めに設定し、入札単価を上げることで、より多くのコンバージョンを獲得することができます。
一方、既存顧客のリピート購入を促進する場合は、目標CPAを低めに設定し、入札単価を抑えることで、効率的な広告運用が可能になります。
さらに、広告配信の時間帯や曜日によっても、最適な入札単価は変化します。コンバージョンが発生しやすい時間帯や曜日を特定し、その期間に入札単価を上げることで、広告の効果を最大化することができます。
目標CPAから広告入札単価を設定する際は、これらの注意点を踏まえ、柔軟に対応することが求められます。継続的なモニタリングと分析を行い、データに基づいた意思決定を下すことで、効果的なCPA管理が可能になります。
適切な目標CPAの設定と、それに基づく入札単価の決定は、広告運用の成功に不可欠な要素です。目標CPAとコンバージョン率から入札単価を逆算し、品質スコアやランディングページの最適化などの要因を考慮しながら、柔軟に入札単価を調整することが重要です。
また、キャンペーンの目的やターゲットオーディエンスに応じて、目標CPAと入札単価を適切に設定することで、広告の効果を最大化することができます。
CPAの改善には、入札単価の設定だけでなく、広告の品質や配信設定、ランディングページの最適化など、多角的なアプローチが必要です。これらの要素を総合的に管理し、PDCAサイクルを回しながら継続的に改善を図ることで、目標CPAの達成と売上の最大化を実現することができるのです。
CPAを改善するための具体的な施策
CPAを改善するためには、広告運用を最適化し、コンバージョン数を増加させつつ、クリック単価を抑える必要があります。ここでは具体的な施策を見ていきましょう。
コンバージョン数を増加させる施策
CPAを引き下げるために最も効果的な方法の1つが、コンバージョン数を増加させることです。そのためには以下のような施策が有効です。
- キーワードの精査と拡充:ターゲットとする顧客が検索しそうなキーワードを洗い出し、広告を掲載する。また、関連性の高いキーワードを追加し、リーチを広げる。
- 広告文の工夫:ユーザーの興味を引き、クリック率を高める魅力的な広告文を作成する。キーワードを含めつつ、製品の特徴やメリットを端的に伝える。
- ランディングページの最適化:広告からの遷移先となるページを最適化し、コンバージョンにつなげる。見出しや導線を工夫し、ユーザビリティを高める。
- ターゲティングの見直し:広告を表示するオーディエンスを見直し、コンバージョン率の高いセグメントにフォーカスする。デモグラフィックやインタレストなどを活用する。
クリック単価を引き下げるための施策
CPAを下げるもう1つの方法は、クリック単価の引き下げです。以下のような施策によって、クリック単価を最適化できます。
- 品質スコアの改善:広告の品質スコアを高めることで、同じ掲載順位を維持しつつクリック単価を下げられる。広告とランディングページの関連性を高め、CTRを上げる。
- 入札単価の調整:目標CPAと現状のCVRを踏まえ、適切な入札単価を設定する。無駄なコストをかけず、利益の出せる範囲内でCPC設定する。
- ネガティブキーワードの活用:広告の無駄な表示を防ぐため、関連性の低いキーワードをネガティブキーワードに設定する。不要なクリックを防ぎ、CPCを下げる。
CPA改善の鍵となる広告の最適化ポイント
CPAを改善するには、PDCAサイクルを回しながら広告の最適化を継続することが不可欠です。特に重要なポイントは以下の通りです。
- 検索クエリの精査:ユーザーがどのようなクエリで検索しているのか分析し、キーワードの拡充やネガティブキーワードの設定に活かす。
- 広告文のテスト:異なる広告文のパターンを用意し、より効果の高いバージョンを見つける。ヘッドラインや説明文、CTAなどを工夫する。
- ランディングページの改善:広告との一貫性を保ちつつ、CROの観点からランディングページを改善する。デザインや訴求内容、導線などを最適化する。
- データの分析と活用:広告運用のデータを定点観測し、改善ポイントを見出す。CVRやCTR、CPCなどの指標を分析し、仮説を立てて施策に落とし込む。
CPAを適切な水準に設定し、上記のような施策を通じて広告運用を最適化することで、獲得単価を理想的な範囲でコントロールしながら、ビジネスの成長を実現することができるでしょう。
売上最大化のためには、状況に応じて目標CPAを柔軟に調整する視点も欠かせません。
固定観念にとらわれず、仮説検証を繰り返しながらCVR改善とCPC低減の両輪で最適化を進めることが、CPA改善の近道と言えます。広告の運用設計と地道なPDCAの積み重ねによって、CPAは着実に改善できるのです。
目標CPAを下げすぎることによる機会損失リスク
目標CPAを下げすぎると、獲得できる顧客数が限られ、機会損失が発生する可能性があります。過度にコスト削減を意識するあまり、本来獲得できたはずの見込み客を逃してしまうリスクを認識しておく必要があります。
コンバージョン単価を抑えることは重要ですが、一定の投資をしてでも新規顧客を獲得し、事業を拡大していく視点を持つことが肝要です。長期的な収益性を見据えた上で、最適なCPAを設定しましょう。
新規顧客獲得のための戦略的なCPA設定
新規顧客の開拓には一定のコストがかかるものですが、その後の収益化を見込んで、CPAを戦略的に設定することが大切です。リピート性の高いビジネスであれば、初回の目標CPAを少し高めに設定し、新規顧客を積極的に獲得する戦略が有効でしょう。
また、商品やサービスの認知度向上を狙って、一時的にCPAを引き上げるのもひとつの手です。ブランディング効果による中長期的な収益アップを期待できます。状況に応じて、CPAを柔軟に調整していく姿勢が求められます。
CPA設定と顧客単価・リピート率の関係性
CPAの設定には、顧客単価(LTV)や購入頻度など、顧客のライフタイムバリューを考慮に入れることが重要です。顧客単価が高く、リピート率も高い見込みがあれば、多少CPAが高くても積極的に顧客獲得を図ることが得策と言えるでしょう。
ビジネスモデル別の目標CPA計算の目安は以下の通りです。
- 非リピート型通販サイト: 目標CPA = (平均顧客単価 - 原価)× 広告費用率
- 資料請求や問合せなどの直接売上に繋がらないケース: 目標CPA = 平均顧客単価 × 成約率
- リピート性のあるサービス: 目標CPA =(平均顧客単価 - 平均原価)× 平均購入回数
これらを参考にしつつ、顧客維持施策によるリピート率のアップや、クロスセル・アップセルによる顧客単価の引き上げにも取り組むことで、CPAを適正な水準に維持しながら、ビジネス成長を目指していくことが可能となります。
CPAの適切な設定と柔軟な調整は、ビジネス成長と売上最大化に直結する重要なファクターです。目標CPAを下げすぎて機会損失を招くことなく、かつ過度な広告支出で赤字に陥ることもないよう、バランス感覚を持った運用を心がけましょう。
顧客のライフタイムバリューを意識しつつ、状況に応じて常にCPAを最適化していくことが、ビジネスの持続的成長に寄与するはずです。
まとめ
ビジネスの成長と売上最大化を目指す上で、獲得単価(CPA)の適切な設定は欠かせません。CPAとは顧客1件あたりの獲得コストで、この目標値を事業の状況に合わせて戦略的に定めることが、広告運用の最適化と収益向上につながります。CPAの設定を誤ると、広告効果の判断が難しくなったり、赤字や機会損失を招くリスクがあるため注意が必要です。
ビジネスモデルに応じた目標CPAの算出方法から、CPAを改善する具体的な施策、売上最大化のための柔軟なCPA運用まで理解を深め、効果的な広告運用を実現しましょう。固定観念にとらわれず、仮説検証を繰り返しながら改善を積み重ねることが、ビジネス成長の鍵を握ります。

River編集部
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